天童将棋駒の工房を訪ねて

2019年7月10日つくり手に会いにゆく

2017年12月7日、当店取り扱いの天童将棋駒の製造元を訪ねて、山形県天童市まで出掛けてきました。
今回は、当店事務所のある大宮(さいたま市)から山形新幹線「つばさ」で、片道2時間半ほどの道のりを行ってきました。

天童駅前はぐいぐい将棋推し

大宮から下り方面の新幹線で、天童駅まで乗り換えなしで1本で行くことができました。
山形駅の次の駅です。

12月の東北地方、さぞかし寒いだろうと覚悟して行ったのですが、意外にも気温は大宮と変わらないくらいに感じました。
天童駅前は将棋カラーがものすごく濃いゾーンになっていて、あちこちに将棋駒の絵やオブジェがあります。
さくらんぼや、ラ・フランスのアピールもあるのですが、やはりいちばん目に飛び込んでくるのは王将と左馬の文字です。

将棋駒作りの工程

現在、当店で取り扱っている将棋盤と駒のセットは、楓材に漆で文字を書いた「書き駒」ですが、今回作業工程を見せてもらったのは、高級品の「黄楊(柘植・つげ)」の駒づくりです。
丸太の状態から駒の形にし、文字を彫るところまで撮影させてもらいました。
(今回は細かい工程は途中省きながら、わかりやすい作業を選んで見せていただきましたので、これがすべての工程ではありません)

1.丸太を輪切りにする

今回は黄楊の丸太を半分に切ったものを、輪切りにしていきます。
黄楊は「木の宝石」と呼ばれる高級材で、非常に硬く、また塗装なしでも上品な光沢があるのが特徴です。
手で使い込むほどに艶と味が出る木材なので、将棋駒の素材として最適です。

2.将棋駒の厚みに板取りする

丸太を輪切りにしたものを、板状に切り出していきます。
この時、平行に切るのではなく、丸ノコに角度をつけて切っていきます。
将棋駒は置いた時に水平ではなく、先端に向かって角度がついています。
この角度に合わせて切っていきます。

3.将棋駒の五角形にする剣立て仕上げ

将棋駒の五角形を作る最終工程です。
四角い板から将棋駒の形に仕上げます。
将棋駒のサイズは6種類あり、普段は1つの種類をまとめて作る段取りで作業するそうです。
いちばん大きいものが、王。
2番目に大きいのが、飛車、角。
3番目が、金、銀。
その次が、桂馬。
さらに小さいのが、香車。
そしていちばん小さいのが、歩です。

4.文字彫り

将棋駒には「書き駒」と「彫り駒」があり、こちらは彫りの工程です。
字母紙という型紙を貼り付けて、それに沿って彫刻刀で掘っていきます。
使うのは1種類の彫刻刀。
これですべての駒を掘っていきます。

この後に目止めを施し、掘ったところに漆を塗り込んで完成です。

飾り駒の木地づくり

この工房では実用品の将棋駒の他に、置物の飾り駒も作っています。

木材ブロックを将棋駒の五角形の形にする工程。
てっぺんの尖った形を作ります。

電動のカンナで面を滑らかに仕上げます。

表面を磨き上げます。

この飾り駒に使われている木材は、栓の木。
ケヤキに似た木目を持ち、木工職人の間では「新ケヤキ」と呼ばれたりしている木材です。
飾り駒はこの後文字彫りと塗装を施して完成となります。

将棋駒の書体

将棋駒に書かれている文字の書体は、大きく分けて「楷書」と「草書」があります。
楷書は小学生が学校の授業で習う基本書体で、かっちりした文字です。
将棋駒の楷書は独特の崩しがありますが、将棋に馴染みがない人でも読める文字です。
草書は、流れるような筆文字の行書よりも、さらに字画を省いて描かれた書体です。
とても風格と味のある書体ですが、残念ながら草書の書き駒職人は、今では1人もいなくなってしまったそうです。

天童駅再び

工房の見学を終え、天童駅内にある将棋資料館へ。
中は撮影禁止だったので残念ながらここで写真をお見せできないのですが、普段の将棋と違う、めちゃくちゃ駒の種類と数が多い将棋盤など展示されていて、見る価値ありです。
人間将棋の歴史についても展示されていて、将棋ファンを飽きさせない内容になっていますよ。

余談ですが、中学生棋士の藤井聡太四段の大活躍で空前の将棋ブームになった頃、やはりこちらの工房に注文が殺到したそうです。
むろん注文したうちの1件は当店だったわけですが。
この時、当店で販売している将棋盤と駒のセットがなかなか入荷できない時期がありました。
これは駒が足りなくなってしまったのと同時に、盤も在庫がなくなってしまったからだそうです。
工房のご主人が将棋駒製作の仕事を今までずっとやってきて、盤が足りなくなったのは初めてだそうです。

藤井四段、恐るべし、ですね。

p.s.
今や当店の定番となっている「折盤と楓漆書き駒のセット」は、「ちょっといい将棋入門用」にぴったりです。
はんこで文字を入れる押駒と違い、駒はすべて職人の手書きですよ。

p.p.s.
隠れた人気商品がこちらのペン立て。
文字は印刷で入れているのでリーズナブルな価格で手に入りますよ。